「病気は、ある日突然やってくるもの」
かつての私は、そう思っていました。
けれど今は、はっきりとわかります。
病気は、1日にしてならない。
日々の暮らしの積み重ねが、静かに、確実に、身体に刻まれていくのだと。
産後3ヶ月、赤ちゃんを連れて東京へ出張しました。
ほぼ寝たきりだった産前産後で落ちた体力では、正直なところ、やはりしんどさもありました。
それでも、行って来られて本当によかったと思っています。

私たちのトークを楽しみに、多くの方が足を運んでくださったこと。
地方への移住、仕事のし過ぎで身体を壊したこと、結婚、出産——
振り返れば、激動の10年でした。
いまの暮らしがあまりにも心地よく、
そして私自身が、ここ10年の歩みを振り返る時間を持てたこと。
すっかり忘れかけていた「働きすぎていた頃の私」を、東京の空気が思い出させてくれました。

電車の遅延は当たり前。いつもどこかで起きている人身事故。人は常に何かに追われていて、余裕も余白もない。
そんな話を、久しぶりに再会した旧友たちとしていました。
彼らもまた、都会で忙しく働く日々を送っていました。
私自身も、かつては同じ場所にいました。
大学を卒業したばかりの頃、昼間は社内デザイナーとして働き、夜は個人事業として受けた仕事をこなす日々。
いま思えば、完全に「ひとりブラック企業」でした。
果物が好きで、運動は苦手。朝は手作りスムージーを飲み、1日中デスクワーク。
身体は冷え、巡りは悪く、お茶を飲むことさえ忘れるほど仕事に没頭していました。
水分不足で汗もかけず、毎年夏バテし、冬には毎年しもやけ。
その結果、子宮内膜症を発症しました。卵巣嚢腫、チョコレート嚢胞でした。
4回の入院と、手術を経験しました。
仕事が大好きでした。自分で選んだ働き方で、後悔はありません。
けれど今振り返ると、やはりやり過ぎだったと思います。そして、他の人には、そこまでして働いてほしくないとも感じています。
当時の私は無知でした。
「手術をすれば治る」と思っていたのです。
しかしそれは間違いでした。
子宮内膜症は、不妊の原因にもなり、痛みとともに一生付き合っていく病気です。
その後、生活を見直し、体質改善に取り組みました。

時間はかかりましたが、ありがたいことに、子どもを授かることができました。
いま、母になって改めて思います。
身体は、無理をしていることを、ちゃんと知って伝えてきているのだと。
今回の出張で思い出したのは、
周りの期待に応えようと必死で、自分の身体や心を見つめる時間を取れていなかった、かつての私自身でした。
そして同時に、
そんな女性は、きっと今もたくさんいるのだろうとも感じました。
仕事、家族…色々な役割。
誰かのために動き続けて、自分のことは後回し。
身体の小さなサインに、気づかないふりをしている人へ。
いま、あなたの身体は、どんな声を出していますか。
疲れていること、無理をしていること、
本当は、もうずっと前から伝えてくれているのかもしれません。
病気は、1日にしてならない。
けれど同じように、回復もまた、日々の積み重ねです。
だからこそ、これからの私は、
身体を置き去りにしない生き方を、そっと手渡していきたいと思っています。
特別なことではなくていい。
日々の暮らしの中で、自分の身体を思い出す、ほんのきっかけを。
どうか、身体を置き去りにしたまま、がんばり続けないでください。
これは、かつての私自身へ向けた言葉であり、
いまを生きる誰かと、分かち合いたい願いです。


